職人さん
テレビで日本のあらゆるジャンルの職人さんを特集する番組があり、それを見るのが好きだ。
テーマが夏祭りであれば、団扇職人や和太鼓職人、下駄職人。
小京都と呼ばれる川越を守る職人さんとして、人力車やうなぎ穫りに使う漁具を作る職人さんなど、多方面に渡って特集が組まれ、大変見所がある。
その中でも印象に残っているのは、ある物の国内トップシェアを誇る焼き物職人の話。
作っているのはなんと、警察署に玄関で輝く、金色の警察章。
あれが焼き物で出来ているというのがまた驚きである。
釜に入れることで金色になるという特殊な液剤を付けて焼く。
釜に入れるときは焼き物っぽいのに、焼き上がりはまるで金箔を貼ったようにピカピカしている。
何度も試行錯誤した結果だそうだが、突き詰めて研究した職人さんは、あっぱれである。
伝統的なものを作る職人さんは、後継者不足に悩んでいるジャンルもあるようだ。
番組が放送されることで、後継者として修行の道に入る人がいたらいいな。
それぐらい感動する仕事ぶりである。
コストパフォーマンスの高いそば屋
とある駅近くに、とても素敵なそば屋がある。
オフィスや理系の大学なんかが立ち並ぶ、かっちりと堅苦しい雰囲気の街だが、随所に年季の入った下町感を覗かせる、えも言われぬノスタルジーを引き起こす街である。
大きなガラス張りの外装で、ショーケースにたくさんの種類のケーキやスコーンを並べたようなこじゃれたカフェの間に、古くからやっている老舗の八百屋やらタバコやがひょっこり顔を覗かせる。
何の前触れもなく、ごく小さな神社の鳥居が現れる。
鳥居の中には、そこいらを縄張りにしているであろうふてぶてしい野良猫が、屈託もなく腹を出して寝そべっている。
駅のすぐそばの高架を、つんざくような音を立てて電車が走っている。
その脇の交差点を、せかせかとサラリーマンや学生達が通り過ぎる。
そんな街にあるその素敵なそば屋は、はてここは職人の街だったか、と思わせるほどにコストパフォーマンスの高いそば定食を供している。
例えば、山と盛られたきし麺のざるに、焼きおにぎり二個、それにお新香と小鉢。
それで大体980円で、天ぷらをつけた天ぷらそば定食でも、1200円程度だったろう。
私の好きだったのは、きしめんのざるに、焼きおにぎりのかわりに季節のかやくご飯をつけたもの。
白米ではなく、かやくごはんだというところが何とも言えない。
そのご飯の美味しいことといったら、きしめんでしっかり満腹になってしまったことすら忘れさせてしまう。
お店の小母さんもとても優しい、感じのいい人で、いつも本当にすっかり満足して帰るのである。
ただ、余りの量の多さなので、大抵食べ終わって駅につく頃には、今日も食べ過ぎたことへの罪悪感を感じるのである。